第15回となるSafety 2024(The 15th World Conference on Injury Prevention and Safety Promotion)がインドのニューデリーで開催された。
安全と傷害予防に関する世界的な会議で、PTW(Powered Two Wheelers)の安全対策に注目が集まった。
The 15th World Conference on Injury Prevention and Safety Promotion (Safety 2024)が、2024年9月2日から4日まで(Pre - Conference Workshopsは8月31日、9月1日に行われた。)インドのニューデリーのタージパレスで開催された。
Safety 2024グローバルイベントでは、安全と傷害予防に世界的な注目が集まり、この分野の国際的な専門家が集まった。「すべての人にとってより安全な未来の構築:傷害と暴力の防止のための公平かつ持続可能な戦略」という統一目標が掲げられており、交通安全は会議プログラムの中で大きく取り上げられた。
主催はジョージ・グローバル・ヘルス研究所と世界保健機関(WHO)
会議テーマは
「すべての人にとってより安全な未来を築く: 傷害と暴力の予防のための公平で持続可能な戦略」
会議の5つのテーマは、世界中で傷害と暴力を減らすための課題と機会を反映している。
- 調整と協力の改善
- 研究と実践の能力の強化
- 持続可能性や公平性などのグローバルヘルスの課題とこの分野との統合
- コミュニティのエンパワーメント
- 情報に基づいた政策立案の促進
Pre - Conference Workshopsは
- PTW(Powered Two Wheelers)の安全性テーマ別ストリーム
- ディープラーニングによるAIの傷害研究と予防への応用
- 安全なコミュニティ - 実施、持続可能性、評価
- すべての人に安全なヘルメット
- 証拠に基づく道路安全政策の推進を支援
- データ連携戦略による交通事故傷害データの改善
などのテーマで議論された。
中でもPTW(Powered Two Wheelers)に関する話題が大きく扱われた。
オートバイやスクーターなどの電動二輪車PTW(Powered Two Wheelers)は、世界中、特に中低所得国の都市モビリティにおいて重要な役割を果たしている。これらの車両は便利な交通手段を提供するが、ライダーや他の道路利用者の安全が大きく重要な課題となっている。PTW関連の衝突、負傷、死亡事故の増加、これらの車両の安全性の問題に対処するための包括的かつ協力的なアプローチが必要になる。
世界では、交通事故により2023年は119万人の予防可能な死亡者が発生し、推定5,000万人が負傷している。
国連のDecade of Action for Road Safety 2021~2030では、2030年までに交通死亡者数と重傷者数を50%削減するという目標を達成するための行動が求められている。
多くの中低所得国では、電動二輪車および三輪車が主要な交通手段であり、世界中でPTW登録の88%が中低所得国で占められている。また報告された全死亡事故のほぼ21%が電動二輪車および三輪車に関連している。これらの国におけるPTWによる交通死亡および重傷は重大であり、全世界の交通外傷全体の70%を超えている可能性がある。
死亡および傷害の50%削減という2030年の国連目標を達成するためには、PTWの安全性が確保されない限り、多くの国ではこの目標を達成することはできない。
Safety 2024及びPre - Conference Workshopsでは
低中所得国向けのPTWの安全性向上のための戦略やヘルメット・子供の同乗者・モーターサイクルABS・PTW分離レーン・バイク運転者の防護服(手袋、履物、ジャケット等)など様々な議論がなされ、子供をオートバイに同乗させることを許可するインドの新しい規制の影響についても掘り下げられた。
1)9月1日のPre – Conferenceの中では
交通安全向上のための課題と戦略に焦点が当てられた。
重要な点としては、道路開発という経済的要請に対して、安全なシステムの重要性を強調する対談の必要性などが挙げられた。
スウェーデンや他の国々の例では、利害関係者の関与と実際的な解決策の成功が強調された。また、政治的擁護者、多部門のパートナーシップ、安全なインフラへの投資の重要性にも触れている。
交通安全における文化と行動変容の役割については、インドとスコットランドの例を挙げて議論された。
セッションの最後は、交通安全に関する知識と戦略を中低所得国にもっと効果的に移転するよう呼びかけて締めくくった。
行動項目として
- 実施戦略に関する研究をさらに進め、知識を現地の状況に移すことを検討する。
- 中低所得国において、リーダーシップ・プログラムを通じてより多くの人々を訓練し、能力を高める。
- ビジョン・ゼロを全体として紹介するのではなく、速度管理など特定の政策要素に焦点を当てる。
が挙げられた。
2)9月2日のMain – Conferenceの中では
オートバイ用ヘルメットの安全性と、ヘルメット着用率向上への取り組みに焦点が当てられた。
主なポイントは、オートバイの乗車率が急激に伸びていること、ヘルメットの着用率が低く、どの国も100%の着用率を達成していないことなどである。
また、ヘルメット規格の重要性と、ヘルメットが安全要件を満たしていることを保証するための課題が強調された。
カンパラでの調査では、ヘルメットの使用率は45%で、正しい使用率は38%だった。
ジャカルタでは、ヘルメットの着用率は運転者が84%、同乗者が79%だった。
Map上のデータを使ったコンピューター・ビジョンのアプローチでは、ジャカルタでのヘルメット着用率は84%だった。
また、聴覚を改善することでライダーの安全性を高める聴覚ヘルメットの可能性についても議論された。
3)9月3日のMain – Conferenceの中では
より安全な交通システムを設計することで死亡事故や重傷事故をなくすことを目指す「ビジョン・ゼロ」のアプローチを強調しながら、交通安全の進化について、事後対応型から事前対応型への進化について議論された。
講演者たちは、持続可能なモビリティへの安全性の統合を強調し、安全性の欠如が持続不可能なシステムにつながる可能性があることを指摘する。
自動車、インフラ、行動を含むシステム統合の重要性、そして安全性を健康、環境、公平性といったより広範な持続可能性の目標に統合する必要性を強調した。また、安全性と持続可能性への包括的なアプローチに焦点を当てたストックホルムでの第3回世界閣僚会議についても言及した。
行動項目として
- 選択肢を増やす
- 持続可能性戦略の主要部分として安全性を統合する
が挙げられた。
4)9月4日のMain – Conferenceの中では
特にインド、インドネシア、ベトナムといった国々でPTWの利用が増加しているアジアにおいて、交通安全におけるPTWの関心が高まっていることに焦点が当てられた。
The Asia-Pacific Road Safety Observatory (APRSO)は、国や地域の協力を通じてPTWの外傷に取り組むための専門センター・オブ・エクセレンスの設立を提案した。
主なポイントは、よりよい教育、より厳格な取り締まり、より安全なインフラの必要性などである。
この提案は、世界的な専門知識を活用し、研究を調整し、知識のギャップを埋めることを目的としている。
議論では、政府の主体性、現実的な解決策、交通安全への取り組みにおける持続可能性と商業的決定要因の統合の重要性が強調された。
行動項目として
- 選択肢を増やす
- ワーキンググループを立ち上げ、センター・オブ・エクセレンスの目的、目標、次のステップを概説する初期コンセプトノートを起草する。
- より広範なオンライン協議を実施し、コンセプト・ノートに関する関係者の意見をさらに集める。
- モロッコのマラケシュで開催される第4回世界交通安全閣僚会議において、PTWの安全に関するサイドイベントまたは拡大セッションの開催を検討する。
が挙げられた。
The 15th World Conference on Injury Prevention and Safety Promotion (Safety 2024)では「すべての人にとってより安全な未来を築く: 傷害と暴力の予防のための公平で持続可能な戦略」と言うテーマで数多くの会議が開催されたが、その中でも特にPTWの安全対策に注目が集まった。
PTWの安全対策に関しては、来年2025年2月にモロッコのマラケシュで開催される第4回世界交通安全閣僚会議において、PTWの安全に関するサイドイベントまたは拡大セッションの開催の検討についても言及された。
PTWの安全対策にビジョン・ゼロを参考にすることは重要だ、モータサイクルABS,ヘルメット、道路インフラ整備に焦点を当てる事も重要だろう。
しかし、もっと法規制、取締り、罰則、免許取得及び更新の教育などにも焦点を当てる必要がある。
そして、もっと各中低所得国の事情にマッチした対策を検討すべきだろう。
まずは、当会議の中でも議論された、データ連携戦略による交通事故傷害データの改善を行い、何に重点を置き人材と費用を当てるのかを把握する必要がある。
そして、その人材育成のための、リーダーシップ・プログラムを構築し、より多くの人々を訓練し、能力を高めることも重要になってくる。
是非、2025年2月にモロッコのマラケシュで開催される第4回世界交通安全閣僚会議において、そういった事も議論して欲しい。