Insurance Institute for Highway Safety、通称IIHSは、損害保険の見地から交通や自動車を研究し、発言をしてきた機関である。
独自の巨大な実験場と研究所に裏打ちされたその発言は、カーメーカーはもちろんのこと、アメリカ政府にまでも大きな影響力を持っている。
経済危機後、IIHSは何に注目しているのか。
そして、日本へのヒントは?
現在、アメリカの道路上では、どんな問題が起きていますか。
Wshington DC / USA
根本的な問題は、クルマが人間を運ぶために高速で動いてしまうことです。
衝突する車のエネルギーが車両の乗員に影響するのを、いかに防ぐか。
これについて、この30年の間にずいぶん進歩がありました。
車両も、乗員の居住空間もずいぶんよくなりましたし、乗員を乗せている室内の構造がかなりよくなっていますね。
しかし、アメリカではいま、問題が少し変貌してきていて、小型車が問題となりつつあります。代替(alternative)車両と言われるものへの関心も高まってきています。
今ガソリン価格は少し下がってきていますが、またガソリン料金があがれば(必ずあがるでしょう)、とても小さな車や、ゴルフカートを改良して道路を走れるようにした代替車などの小さな車への関心が、ふたたび高まってきます。
例えばApteraをご存知ですか。
全米の道路で走ることを提案されている軽量のクルマです。
またLow Speed Electric Vehicles(SegwayP.U.M.A., Gemcar, Electro Ride, Neighborhood Electric Vehicles)。
このようなクルマは、人々を守るのはより難しい。重量で守られていた部分がなくなるからです。
ゴルフカートのように見えるクルマは、ゴルフカートよりも速く走れてモーターサイクルのような分類に入るクルマですが、「時速25マイル以上は出してはいけないことにして一般道を走ってよろしい」という認可をいくつかの都市が出しています。
ちょっと変更を加えたりするだけで、実際にはもっとスピードを出せたりするのですが、実際の路上の安全対策は従来型の乗用車やピックアップ車をもとにできていますから、それと同じレベルの保護はできていません。
このような代替車とバスやトラックなど従来型の重い車が同時に道路を走っているわけですから、路上でいかに衝突を避けるかというのは、大変難しい問題だと考えています。
別の難しい問題は、アメリカは世界のほかの国とはトレンドが違っており、スピードが高まってきていることです。
他の先進国は、スピードを下げてきています。高速道路での制限道路がない区間はどんどん短くなってきています。フランスなどもそうですが、もっと強力にスピード制限をしています。
しかしアメリカでは状況が大きく異なっています。
アメリカでは州毎に最高速度が違いますが、70年代、全米で時速55マイルという速度制限を設けていました。しかし80年代にはそれを緩和し、85年にハイウェイでは80マイルという制限速度に変わり、96年には最高速度制限を完全に廃止してしまいました。
一般道でも65マイル、70マイルという制限速度はたくさん存在します。
アメリカではスピードが上がってしまったわけですね。つまり保護することが難しくなってきた。そういった状況です。