システムの真ん中にはいつも人間がいる。
BMWの哲学は、安全にも生きています。
コンパス氏に聞く、人間の安全の世界観。
現在、アダプティブ・スピード・コントロールシステムが進化して、エマージェンシー・ブレーキングシステムになってきていますが、BMWとしては、システムによって完全にクルマを停止させるのか、最後のところは人間に任せるのか、その辺の判断はいかがなのでしょうか?
いくつかの段階に分けなくてはならないでしょう。
まず、ドライバーの負担を軽減することは非常に重要です。
しかし、最終的には人間がそうした危険を回避出来るような状況に置くということが重要なのです。
最後の可能性を人間に与えることです。
例えば、駐車する場合、5シリーズではまったく自動的に駐車出来るようなシステムになっています。
ただし、今現在は、アクセルを踏むか、ブレーキを踏むかという判断はドライバーがするようになっています。
ですから、ブレーキとアクセルを踏むのはドライバーがしますが、操作は自動的に行なわれます。
もちろん現在では警報を鳴らすなどして、ブレーキを自動でかけることも可能ですが、最後まで、ドライバーがコントロールしているんだという意識があることが大切です。
Cologne / Germany
完全に、ブレーキも、アクセルも、自動で駐車させることも可能です。
しかしその場合は次の段階として、センサーがほぼ100%機能しているということ、もうひとつはドライバーが必ず視覚を持つ、見ているということが重要です。
例えば子どもが視界に入ってきた時に、ドライバーがブレーキを踏むことが出来るような状況にすることが重要なのです。
ですから、まずはセンサーの制御技術をパーフェクトな状況にするということが我々の課題です。
もうひとつはインターフェイス、ドライバーが周りで起こっていることを知覚・認知出来るようにするということです。
次に、駐車ではなく、普通のアウトバーンを走っていてまったく予期しないことが起こる場合です。
現在はまずブレーキをかけますね。
1秒間に3、4、5メートルぐらいですから0.3の加速になるわけです。
このようなブレーキの場合、このままいったら事故になると自動車のシステムが認識した場合には完全なブレーキがかかります。
ただし、自動的にブレーキをかけるようにしても、ドライバーが自分でブレーキをかけなかった場合は、もしかしたらドライバーはブレーキをかけるのではなく、回避しようとしているのかもしれないということを考えます。
事故が起こる0.6秒前になってもまったくドライバーが何もせず、このままいったら完全に事故になるとなった場合に完全なブレーキがかかるようになります。
ただし、0.6秒前ですから、完全に事故を回避することは出来ませんが、とにかくブレーキをかけることによって、被害を少なくしようとするのです。
というのは、ドライバーの方がセンサーよりもよく見ているのです。
ドライバーがハンドルを大きく切った場合は、ブレーキをかけるのではなく、回避しようとしていると判断しなければならないわけです。
ですからブレーキをかけるかどうかなど、事故が起こりそうな前にいくつかの段階をもって事故を防ぐようにしています。
Rome / Italy
vFSS(vorausschauende Frontschutzsysteme Advanced Forward-Looking Safety Systems)というグループがありますね。
ポルシェや、メルセデス、アウディ、BMW、トヨタ、ホンダとか保険会社がメンバーです。
vFSSには3つの重点課題があるのですが、まずひとつは、どこに事故が起こる問題点があるのか、どのようにして事故を回避するのかということ。
そして、どのような要求事項があるのかということ。
そしてまた予防、特に歩行者を守るための予防のテストをどうしたらいいのかということです。
次にクラッシュテストをすることによって、どのように回避したらいいかという技術をテストしていくのです。
BMWはDEKRA社と一緒にクラッシュテストをしました。
どのようなテストだったかというと、時速64kmで走行していて、事故が起こる0.6秒前に完全にブレーキをかけるとその状況の中ではドライバーがどのような状況にあるのか、また、それをしなかった場合とをテストしています。
まずはクラッシュ防止の機能をつけてクラッシュテストをし、次にはブレーキを少しずつ踏んでいってといったようにクラッシュテストをするのです。
ブレーキを踏むと振れますからね。
衝突する前に電子制御でシートベルトを締めるとか、またはそういうことをしない状態でクラッシュテストをするのです。
プレクラッシュの機能を各メーカーが持っていますから、それをテストするのにもこのクラッシュテストはとても良いのです。