Sustainability Research 17

私はテクノロジー大好き人間ですが、まずクルマに乗ると、それまでとは違った世界に入るわけです。

エルンスト・ペッペル ミュンヘン・ルードヴィッヒ・マクシミリアン大学 ヒューマン・サイエンス・センター理事長

写真:エルンスト・ペッペル

ヒューマン・サイエンス・センターの脳学者、ペッペル先生「クルマ」を語る。
何だか、ちょっと、うれしくなってきますね。
やっぱり人間が中心にいるんだな、
だから人間の中心を考えなければならないんだな。
クルマどっぷり人間の皆さん、少し距離を置いて、少し上からクルマを見てみましょうよ。

今大きな変革が自動車に起きています。
それに対してどのようにお考えですか?

非常に短い質問ですが、非常に広い内容ですね。
私は1990年代の半ばに日本での会議で、ある日本のカーメーカーの社長とお会いすることがありました。
その時に話をしていてお互いに興味を持ったのは、快適性と安全性が脳の働きとどのように関係があるかというテーマについてでした。
ご存知のように自動車産業はどうしてもエンジニア中心になってしまっているところですが、そのカーメーカーの社長も気づいていたのは、これからの自動車の安全性・快適性のためには他の分野の専門が入らなければならない、特にコックピットの安全性のためにはそうである、ということでした。

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Switzerland

その会議からほどなくして、具体的な共同プロジェクトを行ないました。具体的には情報処理、ナビゲーション・システムのポジション、位置です。
どうしてそれがエンジニアにとって興味があることなのかいうと、私は自分の研究において、見るということ、視覚について非常に興味があります。
まっすぐ正面を見ていても、少し目を動かすだけで10度ぐらいの範囲を見ることが出来ます。
ですから10度以上になると、2つの目を動かさなくてはならない。
10度まではひとつの目だけで大丈夫ということです。
そして30度、35度になると頭も動かさないと見えなくなってきます。
何度も目を動かし、頭を動かしていると時間を失うということになります。
安全性のためには時間を失ってはなりません。

ということは、ナビゲーション・システムはひとつの目が動かせる範囲に置かなくてはならないということです。これは、エンジニアにとって大きな挑戦になります。
今まで別の部品があったところにナビを置かなくてはならなくなりますからね。
今は変わりましたが、BMWでは以前は下にありました。

心理学的に重要なことは、敏速に、速く、安全に確実に情報を処理するということです。
日本の自動車メーカーと5年間、共同プロジェクトを行ないました。
脳研究の研究結果をここに応用しています。
クルマを運転している時の脳のプロセス、心理学的プロセス、そういった大きなモデルを開発しました。
ここでの一番の要点は何かと言いますと、クルマを運転している時には反応するだけでなく、常に次のことを見ていなくてはなりません。
ですから何かが起きたら反応しなくてはならないということです。