Sustainability talk 17

国連ECEが考える交通の理想と現実

ウォルター・ニスラー 国連欧州経済委員会 サステイナブル・トランスポート・ディビジョン 自動車基準・交通イノベーション課 課長

フランソワ・E・ギシャール 国連欧州経済委員会 サステイナブル・トランスポート・ディビジョン 自動車基準・交通イノベーション課 機械工学士

写真:ウォルター・ニスラー & フランソワ・E・ギシャール

長期的には、自宅のドアから目的地のドアまで、最小限の乗り換えで快適に移動できて、環境にも優しい交通システムが実現するかもしれない。
短期的にはクルマのアクティブセーフティ性能が充実するだろう。
しかし、モビリティが変化するには、まず社会の変化が必要である。

理想の交通システムや理想のクルマ、また近い将来の交通はどのようになるとお考えですか。

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New You City / USA

ニスラー 理想のクルマがどういうクルマになるかは分かりませんが、将来は交通の需要に応えて、一人ひとりの市民が、自宅のドアから目的地のドアまで優れた交通システムによって輸送されるようになるでしょう。
それも、土地資源など現存資源に対する影響を最小限度に抑えられるシステムです。各自が自分のクルマで自分の道を運転するようなスペースは地上にありませんし、もしそのような状況になれば渋滞も起こりやすくなってしまいます。
安心で安全で、しかも手の届く価格のシステムでなければならなりません。
各自が個人のミニヘリコプターやプライベート・ドローンを持つようにはならないでしょう。
そういうアイデアが現在、出てきてはいます。
飛びさえすれば道路のスペースが不要になりますからね。
でも、実現は難しいでしょう。

ギシャール もっと難しいでしょうね。

ニスラー 資源には限りがあります。
土地資源を考えただけでも、道路や駐車スペース、燃料補給のためのスペースなどが必要です。
ですから、将来は、電気エネルギーが自動車輸送において最も使われるようになるかもしれません。
自宅のドアから最寄りの公共交通機関まで輸送してくれる超小型のクルマができるかもしれませんし、それが公共交通機関の一部になるかもしれません。
自宅のドアから直接、公共交通機関に乗り込むことができるようになれば、自分のクルマから公共機関に乗り換える必要がなくなって快適性が増すでしょう。
同時に重要なのは、一度の移動で様々な輸送手段を使わなくてもよくなることです。
もしかしたら、インターネットで全て込みのチケットを買えて、自宅の玄関から最寄りの公共交通機関までは自律走行車が運んでくれて、そこからはもっと快適な他の交通機関に乗り換えることができるようになるかもしれません。
例えば高速列車や高速地下鉄などにです。
そして、もちろん環境にも優しいのです。