クラウス・コンパス(前編)
Bad Homburg / Germany
例えばインフラです。
インフラの場合もあまりお金をかけなくても非常に大きな効果を出すということは可能です。
つまり、歩行者を守る場合にクルマをどういう風にして安全にするかということよりもインフラをちゃんと使うことで、非常に効果が上がるということです。
ところが現在要求されるのは、クルマのボンネットを柔らかくして、衝突した時に歩行者に害がないようにするというような要求が来るわけです。
我々は法律や立法と関係なく、歩行者を守るという予防の研究をしています。我々は車体をいろいろと変えることなく、いかに歩行者を守れるかということを研究しています。
我々が考えている歩行者を交通事故から守るというものは、ドライバーが事故を起こさないよう、様々な情報を事故が起こる前にドライバーに与えるということです。ドライバーに出来るだけ多くの情報を与えることによって、ドライバーが判断して事故を防ぐということです。
そして、様々な情報が入ったにも拘わらずドライバーが反応しなかった場合に違う予防措置というものがクルマ側から出てくるわけです。
それがどういうものかと言うと、まずは警告が入ります。その警告に対してドライバーがリアクション・反応をする、その次がクルマ・車体の方の防御措置です。
現在、消費者団体、あるいは立法の方からの要求というのはまったく逆の順番、逆の方向なのです。
まず「車体を柔らかくしろ」、それから「ドライバーに反応させろ」、そして「ドライバーに警告しろ」になっている。
これは歩行者保護の問題ですが、それだけではなく様々な交通事故の問題にも言えることだと思います。
今現在このテーマにおいて、我々は過去とは違ったやり方・考え方になっています。過去にはいろいろなテストをする研究所やあるいは官庁がいろいろな要求を定義化して提示していたわけです。
今は我々は、自動車メーカーや試験を行なう研究所などが一緒になってこういうものにしていこうという提案をするようにしています。
ドイツでは現在、7つの自動車メーカーと保険会社、そしてBAStが一緒になっていかに効率的な対応が出来るかという提案を考えています。
世界的には安全に関しての様々な問題があると言いましたが、各国々がその国独自のやり方というものを考えていかなくてはならないことが重要です。
例えば中国やインドでは、正式に発表されているものでも年間に20万件もの事故があるという非常に大きな問題を抱えています。
これらの国々では、まず「交通安全」というものを非常に大きなテーマとしなければなりません。そこでの対応・措置というものは、日本や我々欧州とはまったく違った対応・措置をとらなければなりません。
Cologne / Germany
では何が違うかというと、中国やインドを考えた場合には、先進国の行なっているような非常に統合した、例えばエレクトロニクスとか、そういうものでの対応ではなく、インフラベースやマインドから変えていかなくてはならないからです。
途上国において、パッシブセーフティの要求は増えていくわけですけれども、やはり各国々によって事情が違いますから、その国ごとの要求が出て来ます。
それは立法においてもそうですし、消費者団体の要求においてもその国ごとの要求は異なります。
NCAPにしても欧州と日本の場合でも違いますよね。韓国、オーストラリア、それぞれの国によって違ってくるわけです。
しかし我々メーカーは世界に輸出していますから、その国ごとの要求に合わせなくてはならない。
人間が要求しているもの、必要としているものは世界中どこも同じはずなのに、どうしてその国ごとに条件が違うのでしょうか。
我々にとって次の重要な課題は何かと言うと、グローバルなハーモナイゼーションをいかに達成するかということですね。