Sustainability Talk 13 久保田秀暢(後編)

欧州の地から見た自動車分野での基準調和の状況

久保田秀暢 国土交通省近畿運輸局自動車技術安全部部長 前自動車基準認証国際化研究センタージュネーブ事務所長

写真:久保田秀暢

「今ヨーロッパは何を考えているのか。」
教えて、久保田さん第2弾。
この2年間じっくりと見たヨーロッパと、外から見た日本に対する、本音だ。

私がお話出来るのは、ヨーロッパから見たクルマの基準を調和したり、相互承認したりということで、あくまでもヨーロッパからの視点で、偏ったものという前提の話です。
現在ブラジルなどの南米地域は基準調和のフォーラムには加わっていませんが、インド、中国は会議には参加しています。

つまり、98年協定という国際基準協定には入っているけれど相互認証の協定には加入していません。
ですから、ヨーロッパはどうやって中国やインドをとり込もうかということが大きな課題です。
そうした中でヨーロッパだけで27票を持っています。
3分の2の議決だけで法案を通すことができますから、これは大きい。
インドが入ろうが、中国が入ろうが、日本もそうですけど、それぞれ1票です。
そうした国々を巻き込みたい時に、27票を持つことの意味は非常に大きく、これを変えようとする動きは今のところありません。
一方で、このシステムがインド等が58年協定に入ることを躊躇している理由の一つです。

そうすると、重要な中国やインドなどが入らない協定に何の意味があるのかという突き上げが欧州の産業界からもかなりあるようです。
またもう一方で、TPPやEPAなど、あれは市場開放や開国などと日本では言われているけれど、個人的には囲い込みの保護主義の面もあると思っています。
そうした流れのなかでヨーロッパの基準を如何にを他国に採用させるか、ここ2-3年非常に欧州が苦心している状況があります。

自動車でいうと、インド、中国政府にしても、安全基準や環境基準などについてはヨーロッパを向いているように思います。
アメリカの方はあまり向いていないですよね。
そういう点では。EPAやTPPに入るかは別としても、彼らはヨーロッパを気にしています。
そうすると、日本もヨーロッパ基準を気にせざるを得なくなっているというのが現状だと思うのです。

写真

London / UK

そうですよね。
今、ホットな話題は電気自動車関係の基準です。
電気自動車に関しては、中国は独自に基準をどんどん作っていて、ヨーロッパメーカーなどは困っているのですが、ヨーロッパのメーカーからすると、「ヨーロッパの政府は何をしているのか!」ということになっているようです。
基準調和のフォーラムで、中国を巻き込まないでやっているから、中国が勝手に基準が作られてしまうではないかと。

インドはまだヨーロッパの方をある程度見ている気がしますが、中国は独自の自分たちだけのスタンダードを作るという動きが大きくて、会議には参加しますが、独自の基準を作ることがよくあります。彼らがしたたかなのは、そういうことをしていても、自分たちの基準作りを真っ向から否定出来る存在はいないと思っているところですね。
そうしたこともあって、産業界からはヨーロッパ政府に「中国をなんとかしろ」と突き上げがあるし、ヨーロッパ勢はなんとかして中国を巻き込みたいと思っているようですね。

それに対してヨーロッパは危機感を抱いているけれども、自分たちのシステム大きく変えようという動きは今のところありません。。
そうしたジレンマをヨーロッパは抱えているようです。
そんな中で、中国をどうするかという問題がヨーロッパにはあります。