Arizona / USA
今後石油自体は、価格が低迷していますから採掘量を抑えていますが、あと2年くらいで需要がまた戻りますね、そうすると高値が続くのでしょうか。
そこがポイントで、GDPの成長率がどのあたりまで戻っていくかによって変わります。
我々の「Medium-Term Oil Market Report」には、中期的に年間GDP比で5%の高成長がある場合のシナリオがありますが、最近オイル需要は下がっていますので余剰生産能力は戻ったわけです。5%の高成長で余剰生産能力はだんだん減ってしまうんですね。
成長率が戻った場合は余剰生産能力は減り原油価格が上がり、戻らない場合は余剰生産能力は減らず原油価格は下がったままです。GDP成長率が3%と仮定するとあまり戻らない。
5%シナリオは、IMFや世界銀行が言っているシナリオで、本当に5%で戻るのか、そんなに成長が進むのかわかりません。
今我々は、このふたつのシナリオを使って、どんなインパクトがあるのかを研究しています。需要が戻り、特に設備投資がそれに見あった形で伸びていかないと、2014年とか2015年にまた乱高下することが起こりえますね。
それが一番、心配です。
したがって、投資をしなさいというのがひとつと、一方で需要国は省エネをしなさいというのがあります。省エネをすると、オイル・インテンシティ、つまり、石油消費のGDP弾性値みたいなものをぐっと引きあげられるんです。そうすると成長はこっち、オイルマーケットはその次と、いいとこ取りができるんです。使うほうを抑えていけば、消費国も努力する余地があると思うのです。
生産国が投資するかどうか、生産国にカードがあるのではなくて、消費国においてもそういうカードを使えば需給をよくすることは可能だろうと思います。
去年のガソリン高値や地球環境問題で、石油の需要構造が変わったのではないかという議論がありますね。
例えばエコカーや軽量車が売れるようになり、特別減税などもありますし、GMが潰れる時代でもありますから、確かに構造的な変化も起こりつつあるのでしょう。それに加え、地球環境問題で各国政府が野心的開発を行っていけば、時間はかかるかもしれないけれど今のシナリオもあながち不可能ではないと思います。
省エネや地球環境に対する努力は、石油市場へのインパクトを持つんですね。
IEAはマーケットをフォローする機関ですから、「逆に地球環境問題に真面目に対処することが、石油市場にポジティブな影響を与えるから、それを一生懸命やった方がいい」と提唱しているわけです。
素人の考えでは、中国が切り札を持つのではという考え方があるのですが。
ある意味、中国で石油消費を減らさないと需給は改善しないので、そういう意味で切り札かも知れません。
しかし、中国は自分が使わないと石油価格がぐっと上がって、自分の首を絞めることになるんですね。中国には石炭もあって、石炭を液化したcoal to liquidで走らせているバスなどもありますが、二酸化炭素や大気汚染に対するコストが高くて負担が大変です。
ですから、もし二酸化炭素削減のレジームに中国が入ってくることになると、必ずしも石炭に逃げられません。
ただ、発電は確かに、石炭に逃げられるとコントロールしようがないですね。
それに対しては何らかのコントロールとしてのインセンティブ、つまりCCSを使うことに対する何らかのインセンティブをつけなければならないでしょう。
「地球環境問題の最大のリトマステスト」は、CCSがうまくメカニズムの中に入っていることなのです。
*CCS(Carbon Dioxide Capture and Storage/CCS技術とは、発電所や天然ガス鉱山など大規模な排出源で発生する二酸化炭素を、他のガスから分離・回収し、安定した地層に貯留したり、海洋に隔離することにより、二酸化炭素を大気から長期間隔離する技術をさします。国立環境研究所の資料より)