Sustainability Research 009 クラウス・コンパス(後編)

わかります。実は日本でもインフラがないところがあります。
田舎にはありませんから。
今日本でも北海道というところで同じようなカーナビとGPSと情報センターという組み合わせで実験をしています。北海道はこちらと同じように雪が多いところなので、スリップをしたという記録が寄せられると、ここは非常に滑るところだという情報がバッと行くわけです、次にその道に入っていく人は気をつけてとか、ここで必ずブレーキを何度か踏むと何か障害物があるかもしれないとか、ここはオーバースピードでどうしても入ってしまいやすい危険ポイントだとかそういうことがわかるように。
北海道の例は日産の試みですが、ホンダにはインターナビという同様のものがあります。

コンパス: 我々も、そういった安全な技術のテストがフランクフルトの近くで行なわれています。
そこはとても大きなエリアなのですが、そこにインフラとして交差点の信号にコミュニケーションの機械をつけておいて、そこでいろいろなメーカーやサプライヤーが様々なテストが出来るようになっています。

日産やホンダのシステムを使えば、画期的に安全な国づくりが出来ると、私は考えています。
それらのシステムには、個々の事例がデータとして蓄積されていきます。例えば1年間その道路を走ったクルマの情報が1年間分蓄積されて、その情報を持って国のインフラ整備の部署に行くんです。危険箇所がここにこれだけあり、安全ではない道路がこれだけあるので、これを整備しなさいとプロポーザルする。
するとそれを裏付けに予算を付けて整備をするようになり、そこは安全な道路となるわけです。つまり、個々の貯まったデータで、現在の道路のアセスメントが出来るわけです。
例えば、それを基に保険料の見直しが出来る。例えば、安全な道路を走る人は保険料を安く出来る、危険な道路を走って通勤しなくてはならない人は高い保険料になるということも考えられるわけです。
また、運輸業に関しては、フリートの安全マネージメントにも寄与することができます。

写真

NewYorkCity / USA

コンパス: おっしゃったその情報で道路の整備・アセスメントだけでなく、クルマの効率化にも使えます。
それは何かというと、二酸化炭素の問題もそうですけれど、クルマの流れを最善化することが出来ますよね。渋滞を少なくすることが出来る。
そうするとハイブリッドカーの場合、その先に行くと渋滞になるとなったらその前に充電しておくとかそういうクルマの効率化、クルマの流れの効率化にも貢献出来ますね。
ですから、我々としても提供される情報を集めて、その情報を基に最適化を図りたいのです。

例えば事故が起こった後というのは1秒が大切なわけです。生命にかかわってきますから。
今現在、すでにそのクルマがどこにあるかはGPSでわかります。
それから、クラッシュの状況がわかりますから、衝突した箇所が横なのか前なのかがわかります。
それがどのようにひどい傷害なのか、助手席に人がいたのか、シートベルトをしていたのか。こうした事故の状況がすぐに把握出来るようになっています。
この情報とともに自動的に警報を発します。
するとすぐに救急車が来て救急隊員が出来るだけ最適な処置で事故の被害者を助けることが出来ます。
現在BMW社は本当に誇りを持って言えるのですが、この技術において他のメーカーよりずっと進んでいます。この技術が徐々にある国もあると思いますし、増えてくる国もあると思いますが。

E-コールの場合は、まず最初は警報を発して連絡をするだけですが、我々の場合は次の段階に進んでいて、様々な詳しい情報も与え、それによってどのように被害者に対応出来るか、その段階に進んでいます。
アメリカ、フロリダのマイアミにある非常に大きな救急センターと協力して、事故が起きた時に外科医はどういう情報が欲しいかということを調査しています。

今現在我々がアメリカで販売している約80%のクルマがこの機能を持っています。
この機能によって副次的に我々に様々な情報が入ってきます。
入ってくる様々な事故に関する情報を集めて分析し、新しく学んだものを活かして次の世代の新しい技術を改善していこうとしています。
アメリカでの交通事故の研究は私が長となって行なっています。
例えばそこで大きな事故があった場合にはドイツから専門家を向かわせ実際にクルマを見て、その事故に対する情報などを分析しています。