Sustainability Research 009 クラウス・コンパス(後編)

自分が運転をする楽しみというものを、クルマはドライバーから奪ってはいけないわけです。

クラウス・コンパス BMWグループ トータル車両構造・インテグレーション ディレクター 車両安全

写真:クラウス・コンパス

今現在、コンパスさんが将来重要と思われる技術、考え方を3つぐらい挙げていただけますか。

コンパス: 一番大切だと思われる技術の一つはESCですが、将来ということですのでこれについては申し上げません。
一つは、歩行者(との接触)の予防。
その次は他のクルマとの衝突の予防。
そして、ドライバーの注意力の制御です。

最後に申し上げた、ドライバー・ディストラクションからいきましょう。
一番重要なのは、危険な状況になった時にドライバーがすぐに集中してその後に対する対応が出来るように、それをどうしたら出来るかということが一番大切でしょう。人間工学の見地から、クルマをそのようにつくることですね。
「ドライバーの機能があちこちに惑わされないようにし、外部に対する観察を、クルマがするようにする、ドライバーが今何をしているかをクルマが察知しなくてはならない」とそのような機能です。
つまり、その時点でドライバーが交通標識に注意が向いていないとわかったら、クルマの方がそれをするということです。
例を言いますと、渋滞している場所でのアシスタント機能です。
これは現在も技術的には可能で実現もされていますね。

二つ目は、車線を変更する時のアシスタント、車線から出てしまった時のアシスタントがあります。
その他にも、クルマとクルマの間隔のコントロールをする機能もあります。
既にこうした機能があるので、渋滞の時にドライバーが何もしなくても安全に走れるようになっています。技術的には既に大きな問題ではありません。
ただし問題は何かと言うとクルマがそれをしてくれるとなった時に、ドライバーが「どうせクルマがしてくれるから自分は新聞を読んでもいいんだ」ということになった場合ですね。
つまり、「非常に危険な状況になった時に、ドライバー自体がそういう状態に無い」となった場合が大きな問題です。
これらの機能があれば、渋滞している時にドライバーは非常に楽ですね。
何もしなくてもクルマがゆっくりと走って、新聞を読んでいることも出来るわけですから。

それにも拘わらず、ドライバーがクルマをコントロールすることが出来るような状況にどのようにして持っていくことが出来るかということが次の課題です。
先程申し上げた3つ目の機能、このドライバーの行動を制御する機能のことです。
カー・トゥ・カー(Car to Car)・コミュニケーション、これがその一つの技術です。