Sustainability Research 009 クラウス・コンパス(後編)

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BMW Welt / Munich / Germany

カメラやセンサーなどの様々な技術によって、距離を測ったり、自動で車線のはみ出しの修正が出来たり、前方のクルマとの距離を測って自動でブレーキがかかったり、渋滞であったら自動でクルマが制御されたりというようなことがいろいろなことが人間を介さずに可能となったのですが、自動車やトランスポーテーション自体はオートマティカリーな方向に進むと考えていらっしゃいますか?
またそれが良いと思われますか?

コンパス: 良いとは思いません。
もちろんオートマティックになっていく方向であることは間違いないと思いますが、すべてをそうすることが良いとは思いません。
例えば渋滞や、駐車など、ドライバーがあまり運転したくないような特別な状況において、代わりにクルマが行なうことはあるでしょう。

しかし、クルマにはドライバーが必要です。
法律上、ドライバーは運転が出来るような状況にいなくてはならないと決まってもいますよね。
ビエナ・コンベンションでも決められたことですが、「クルマにドライバーが乗ってはいるけれども何もせずにクルマだけが走るということは禁止」されています。
先程も言いましたが、BMWにはドライバー・トレーニングプログラムがあり、そこには専門のトレーナーがいます。

そこでは、レーシングカーが走るコースで受講者にクルマに乗ってもらって、クルマが自動的に走るようなトレーニングがあります。
もちろん他のクルマは走っていない状況ですし犬も歩行者もいません。普通の道路とはまったく違う状況で行ないます。
専門のトレーナーのクルマが先を走って、その後に受講者のクルマが続きます。
前のクルマがブレーキを踏んだら、後ろのクルマのブレーキが自動的にかかるのです。
そのクルマは数センチという正確さで距離を測っています。
ドライバーは座っているだけの、このトレーニングでドライバーは何を感じるでしょう?
普通の道路で運転をする場合には運転は楽しみでもあるわけですから、自分が運転をする楽しみというものを、クルマはドライバーから奪ってはいけないわけです。

ホルツ: ですから常に我々の哲学が何かというと、ドライバーが一番の主(あるじ)になるわけです。
クルマの中でドライバーが快く運転出来るためのアシスタントの機能を、我々がたくさんつけることで、ドライバーが楽しく運転出来るようにするのだけれども、ドライバーが主(あるじ)なので、ドライバーが自分で運転をするということが主なのです。

カー・トゥー・カー・コミュニケーションや、E-コールの考え方は、今は個々のクルマが個々のクルマを守るとか内向きですが、一つのプロテクションをみんなでやろうとなったら個々のプロテクションがそのセーフティーの機能を少なくして全体でやれるという風になると、セーフティーにかかるコストは安価になると考えられますか?

コンパス: 我々の最終的な目標はそこです。しかし現在は、立法者・法律や消費者団体がそれを一緒にしようという体制にありません。
ですから我々は今現在は自分たちで出来る範囲でやっていこうという状態になっています。

実は以前、NHTSAのメドフォードさんと話した時、「必ずそうなるからそっちに向かって一緒にやろう」と二人で盛り上がりました。

コンパス: 私もそう思います。
最初に戻りますけが、今現在我々メーカーはパッシブな安全性をどんどん進めるように要求が来ています。
しかし、「それをやるためにはアクティブなものをどんどん進めていってこちらのほうでやっていくと安全性が高められるんですよ」という状況に持っていって、彼らを納得させようと考えています。